遺産分割

相続と遺産分割

人が亡くなると,その瞬間に相続が始まります。相続とは,亡くなった人の財産を法律および死亡した人の最終意思の効果として,特定の者に受け継がせる事をいいます。

相続人が一人であれば遺産を分ける必要はありませんし,また,遺言があればそれに従います。しかし,民法で定められる法定相続人が複数で,遺言書がない場合(遺言書が無効な場合も)には,法定相続人の間で遺産分割が行われることになります。

遺産分割とは

遺産分割とは,亡くなった人の財産を,例えば自宅の土地・建物は長男に,山林は次男に,というようにそれぞれの共同相続人に分配することです。

法定相続人全員で「遺産分割協議」によって遺産分割を行います。

遺産分割協議とは,相続人全員が話し合い,全員の合意によって遺産を分割するための手続きです。話し合いは,全員が一堂に会するだけでなく,手紙や電話を使った順次のやりとりでもかまいません。相続人同士が直接話し合って遺産分割をするので,意見の対立がなければ迅速に遺産分割が終了する可能性がある反面,意見がまとまらずに遺産分割が何年も進まない可能性もあります。

相続人全員の合意がまとまった場合,「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書とは,遺産分割協議の最終的な内容を明記するための書面です。

遺産分割協議書は,遺産の中に不動産があってその登記を移転する場合や,預貯金の名義書換・解約手続き等に必要になる重要な書面ですので実印を用います。また,印鑑登録証明書を取る必要があります。できれば専門家の意見を参考にするなどして慎重に作成することが望ましいと言えます。

法定相続人

法定相続人とは,被相続人(相続される人)が亡くなったときに法律上定められた相続する権利がある人の事です。

法定相続人は,配偶者と血縁の人達(被相続人の子,被相続人の父母や祖父母などの直系尊属,被相続人の兄弟姉妹)に大きく分けられます。

(1)配偶者

婚姻関係にある夫婦の一方のことで,夫にとっては妻,妻にとっては夫を指します。

婚姻届が出ていれば,すなわち法律上夫婦であれば別居中でも相続権がありますが,事実上は夫婦のような関係であっても婚姻届が出されていない,いわゆる内縁関係の場合は配偶者とは認められず相続人にはなれません。

(2)子

実子は,結婚して戸籍が別になっても相続権があります。

父母が離婚して,一方の親権に服したとしても,子は両方の親の相続人になります。

養子は,実子と同様,養親の相続人になりますし,実の親の相続人にもなります。(なお,特別養子は実の親子関係は消滅します)

また,子が相続人にならずに孫が相続人になる場合もあります(代襲相続と言います)。

たとえば,祖父(被相続人)の遺産を継ぐべき父親(子)が祖父より先に死亡していたときや,父親(子)が相続欠格や相続廃除により相続権を失ったときです。

(3)直系尊属

父母・祖父母・曾祖父母などを指します。直系尊属が相続人になるのは,被相続人に子も孫もいないときです。たとえば,父と祖父がいる場合は親等の近い父が相続人になります。

(4)兄弟姉妹

死んだ人に子も孫も直系尊属もいない場合,その人の兄弟姉妹が相続人となります。

※なお,相続放棄がなされた場合,その相続人がいなかったことになるので注意が必要です。

法定相続人の相続順位とその割合

民法では,配偶者は常に相続人となるとして,他の相続人の相続順位と相続割合を次のように定めています。

第1順位 配偶者及び子がいる場合,配偶者及び子が相続人になります。
配偶者は全遺産の2分の1を,2分の1を相続します。子が複数いる場合は,その2分の1を子の数で均等に分けます。(子が3人いれば,子一人あたりの相続分は全遺産の6分の1になります。)
ただし,非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1になります。
なお,配偶者がいなければ子が全遺産を相続します。
第2順位 子がいない場合,配偶者と直系尊属が相続人になります。
配偶者は全遺産の3分の2を,直系尊属3分の1を相続します。
なお,配偶者がいなければ直系尊属が全遺産を相続します。
第3順位 子も直系尊属もいない場合,配偶者と兄弟が相続人になります。
配偶者が全遺産の4分の3を,兄弟姉妹4分の1を相続します。兄弟姉妹の相続分は原則として均等ですが,父母の一方が異なる兄弟姉妹の相続分は,父母双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。
なお,配偶者がいなければ兄弟が全遺産を相続します。

代襲相続

本来相続人となるべき人が相続開始以前に死亡していたときなどに,その子や孫が代わって相続人になる制度です。代襲は,本来相続人となるべきであった人がすでに死亡している場合のほか,相続欠格や相続人の廃除によって相続権を失った場合にもおこります。これに対し,相続人が相続放棄によって相続権を失ったときには代襲相続にはなりません。

代襲相続できる相続人の範囲

代襲相続には,①被相続人の子が死亡していた時などのその子以下(孫,曾孫...),②被相続人の兄弟が死亡していた時のその子(甥・姪)の2つのパターンがあります。ただし,直系卑属(兄弟姉妹の場合には傍系卑属)に限られますので,養子が死亡していた時などは,養子縁組前に生まれていた子は代襲者にはなることができません。

①は,子が死亡していた時に孫が相続権を引き継ぐというものですが,代襲するはずであった孫も死亡していた場合,曾孫が相続します。これを再代襲といいます。曾孫以下についても同じように再代襲が起こります。

これに対し,②は,兄弟姉妹が相続人となるはずが,既に死亡していた場合,その子(被相続人の甥や姪)までは相続権を引き継ぎますが,甥や姪がすでに死亡していた時は,甥や姪の子にまでは代襲が認められません。

遺産分割協議で話し合いがまとまらない場合

協議が出来ない場合や協議してもまとまらない場合,裁判所の手続きにより遺産分割することになります。裁判所を利用する手続きには「調停」と「審判」があります。

調停とは,裁判所で行われる話し合いです。家庭裁判所に調停の申立をすることで開始します。

調停手続きでは,調停委員が相続人らから事情を聞いたり,必要に応じて資料を提出してもらうなどして明らかになった具体的な事情を前提に,相続人らに助言したり,納得できそうな解決案を示すなどして,相続人全員での合意を目指して話し合いが進められます。

調停で相続人間に合意が成立すると,その合意の内容は調停調書に記載されます。調停が成立すると,それは確定した審判と同じ効力があります。

他方,話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合には,自動的に審判手続きが開始されることになります。

審判とは,法律の専門家である裁判官が,相続に関する全ての事情を考慮して,裁判官の判断によって遺産分割に関する結論を出す手続きです。

裁判官が遺産分割の審判を出すと,その審判の内容に沿って遺産分割をすることになります。この審判の内容に不服がある場合には,即時抗告という手続きにより,裁判所に審判を取り消すように求めることもできます。

ただし,実務では,預貯金は審判の対象とはされていません。