一月ほど前に父が亡くなりました。相続人は私と妹の二人です。父の死後に,遺品を整理していたらサラ金のカードが出てきて問い合わせたら30万円の借金があったので私が支払ってしまいました。その後,父にはほとんど財産はなく,借金が500万円ほどあることがわかりました。父の借金の一部を支払ってしまった私は相続放棄できないのでしょうか?

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには,単純承認したものとみなされ,3ヶ月の熟慮期間中であったとしても,その後に相続放棄することが出来なくなります(民法第921条1号)。

そこで,ご質問のような場合,単純承認にあたるかが問題となり,借金の返済をするのにあなたの財産から支払ったのか,それとも父の遺産から支払ったのかによって結論が変わります。

あなたの財産から父の借金を返済した場合には,相続財産の一部を処分したとは言えず単純承認にはあたらないため,相続放棄することは可能だと思われます。

この点について,自分の固有財産にあたると認定された死亡保険金から被相続人の相続債務を一部弁済した事案において,これが相続財産の一部処分にあたらないと判断した判例があります(福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日決定)。

これに対し,父の相続財産から相続債務を弁済した場合には,相続財産の一部の処分にあたる可能性が高く,相続放棄できないおそれがあります。

相続人としては単純承認する意思はなく,自己の利益を図るための行為でなくとも,相続財産の処分にあたるとされる事がありますので,注意が必要です。

判例でも,相続財産に相続人が自分の財産を加えて相続債務の弁済をした場合に,単純承認事由にあたるとした事案があります。