私は父の死後,長い間にわたり高齢で認知症の母の介護をしてきました。私は二人兄弟で兄がいるのですが,兄は一切母の面倒を見ませんでした。母が先日亡くなりましたが,母の相続をするのに私は兄より多くの相続分をもらえないのでしょうか?

被相続人が亡くなる前に,被相続人の財産を維持したり,増加したりすることに貢献した相続人にはその貢献に相当する額を多く相続させる制度が寄与分の制度です(民法904条の2第1項)。

寄与分が認められるためには,当事者全員の合意が得られるか,次のような要件を満たす必要があります。

1.特別の寄与であること

民法では,夫婦間の協力扶助義務(752条)や,親族間の扶養義務(877条1項)などが定められており,相続においては,これらの義務の存在を前提として法定相続分が決められています。

そのため,すべての労務の提供や療養看護等について寄与分が認められるわけではなく,夫婦や親族間の扶助として通常行うと期待される程度を越える特別の労務の提供や療養看護等を行った事が要求されるのです。

2.対価を受けていないこと(無償性

その労務の提供や療養看護等が無償又はこれに近い状態で行われていなければなりません。

3.被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること

その特別の寄与によって,被相続人の財産が減少することを食い止めたり,増加させたりという財産上の効果が実際に現れたことが求められます。

あなたのお母さんに対する介護が,無償,またはそれに近い状態で行われ,その介護がなければお母さんが自分で介護サービスの費用を負担しなければならず,あなたの介護のおかげでお母さんの財産の減少を防ぐことができたと言えるようであれば,寄与分が認められる可能性があります。

寄与分を決めるためには,まず相続人全員,あなたの場合はお兄さんと協議を行うことが必要です。協議がまとまらない場合,家庭裁判所の調停・審判によることになります。