成年後見制度で選挙権喪失は違憲とする東京地裁判決が出ました

認知症や,知的障害などで判断能力が十分でない人の財産管理を行う「成年後見制度」を利用すると選挙権がなくなる公職選挙法の規定は違憲だとして,茨城県牛久市の女性が,国に選挙権があることの確認を求めた訴訟の判決で,平成25年3月14日東京地裁は,この規定が憲法に違反すると判断し,女性の訴えを認める判決を言い渡しました。

同様の訴訟は,さいたま,京都,札幌の各地裁で起こされており今回の判決が初の司法判断となります。

判決が確定すれば女性は投票できるようになります。また,違憲を解消するには公選法の改正が必要なことから,昨年末の時点で成年後見人制度を利用している約13万6,000人(最高裁調べ)の成年被後見人の選挙権にも影響を与える可能性があります。

判決は,在外邦人の投票を制限する公選法の規定を違憲とした平成17年9月の最高裁大法廷判決を引用し,今回問題となった規定が「公正を確保しつつ投票を認めることが事実上不能か著しく困難で,選挙権の制限がやむを得ない場合」にあたるかどうかを判断しました。

そして,投票には「物事の道理を理解する能力が必要」としましたが,「成年後見人を付ける際に審判で判断される財産の管理能力と,投票能力は明らかに異なる」と指摘し,「成年後見人が付いても投票能力のある人は少なからずいる」としました。

さらに,障害者の自己決定を尊重し,通常の生活をする社会を作る「ノーマライゼーション」という成年後見制度の理念を重視し,この理念に基づいて欧米では法改正が進んでいることにも触れて,「選挙権を奪うことは制度の趣旨に反し,国際的な潮流にも反する」と述べ,公職選挙法の規定を憲法に違反すると判断しました。