死因贈与(しいんぞうよ)

死因贈与とは,贈与する人の死亡によって効力が発生する生前になされる財産を贈与する契約のことを言います(民法第554条)。贈与をする人と受ける人の間で,「私が死んだらこの財産をあげましょう」と約束しておくような場合です。

死因贈与と,遺言書によって贈与をする遺贈は,贈与者または遺贈者の死亡によって贈与の効力が生じるという点で,よく似ていることから,死因贈与にはその性質に反しないのであれば,遺贈に関する規定が準用されると民法で規定されています。

死因贈与が遺贈と異なる点は,まず第1に,死因贈与は契約であるということから,贈与する人と贈与を受ける人との間に合意が必要になります。これに対して,遺贈では受贈者(遺贈を受ける人)の意思に関わりなく,遺贈をする人の一方的な意思表示によって行うことができます。

第2に遺贈は遺言によって行われることから,法定の要件を満たした書面(遺言書)を作成することが必要になりますが,死因贈与は必ずしも書面による必要はないとされています(最判昭和32年5月21日)。とはいえ,民法によれば書面によらない贈与はいつでもこれを取り消すことができるため,
可能であれば死因贈与においても書面で契約書を作成することで後に撤回のトラブルを避けることができます。