昨年12月の衆院選について東京高裁,札幌高裁で選挙を違憲とする判決が言い渡されました

「一票の格差」が最大で2.43倍になった昨年12月の衆院選について,弁護士グループが憲法違反だとして選挙の無効(やり直し)を全国に14ある全ての高裁・支部に提訴していましたが,平成25年3月6日,東京高裁において「投票価値の平等に反している」として,選挙を違憲とする判決が言い渡されました。ただ,選挙を無効とする請求は棄却されました。3月7日には,札幌高裁でも東京高裁と同様の判断が示されました。

6日の東京高裁判決では,「最高裁判決で強い警鐘が鳴らされたのに,区割りが是正されず選挙に至ったのは看過できない」と厳しく指摘され,また7日の札幌高裁判決は「憲法上要求される合理的期間内に是正されなかった」として違憲と判断されました。

「一票の格差」をめぐっては,既に最高裁が平成23年に,平成21年衆院選について,各都道府県に1議席を割り振る「1人別枠方式」は投票価値の平等に反するとして違憲状態と判断しています。

この後,昨年11月に小選挙区を「0増5減」とする格差是正関連法が国会で成立しましたが,選挙区割りの見直しをしないまま昨年12月に衆院選が行われています。最高裁判決から昨年の選挙まで約1年9ヶ月あったことから格差是正が難しかったとは言えず,裁判所の違憲判断は当然と言えます。

「一票の格差」が何故問題になるのかというと,選挙においては,選出される議員一人当たりの人口(有権者数)が選挙区によって異なるため,人口(有権者数)が少ない選挙区ほど有権者一人一人の投じる一票の価値は大きくなる一方で,逆に人口(有権者数)が多い選挙区では一票の価値が小さくなることから,憲法第14条に規定される法の下の平等に反すると考えられるからです。

衆・参院はこれまでも一票の格差を是正することに取り組んできましたが,選挙制度改革とも関連し政党や議員の利害が絡む問題でもあり,調整は難しいようです。

一連の訴訟では27日までに高裁の判決が出そろう予定です。また,弁護士グループは最高裁の判断を仰ぐために上告しているので,年内にも最高裁が判断を統一する判決を言い渡し,確定する見通しです。